カナダ・ウィニペグで就活中の50歳。カナダの就活の実録。その2
昔からそうなのですが、なりたいと思う職がありません。
接客業は向いていないなと思ったり、車の運転が好きではないから運転手にはなれないかも、など『なりたくない職』はなんとなく思いつきます。
妻と一緒に働ける職がいいなと思ってカナダグースで夫婦でしばらく働いていましたが、私のほうが2024年4月の約300人レイオフ対象の一員になってしまいました。
2024年7月から始まる職業訓練センターの6か月プログラムに申し込み、前職と同じ製造業分野である溶接や製造(ファブリケーション)を学んで、その分野で就職先を探すことにしたのです。作業をしているときは人と接する必要がないのが良いところで、作り上げる喜びがDIY好きの私にはあっていると感じていました。
さらに、同じ作業をしていても飽きず「こんな単純作業でお金もらえるなんてラッキーだな」と思える性格です。若いころ日本で会社に勤めていた時は責任ある仕事で心身に負担がかかりすぎていたけど、せっかく日本を離れてカナダで勤めるのだったら『人とあまり接しない仕事で人間関係のストレスを最低限度にし、頑張りすぎず責任が少ない仕事を選んで家族を優先にしよう』と常日頃考えていたのでした。
ですからやりたい仕事というのはなく、消去法で選ばれていったのが製造業だったのです。
職業訓練センターでは溶接も製造も両方習っていますが、製造の会社に向けて履歴書(レジュメ)を配りだしたのは今年2024年12月4日。
うちから比較的近いファブリケーション工場を十数軒くらいリストにして吹雪の中、一軒一軒回ります。前回のブログでも書きましたが、「とりあえずレジュメは預かっておく」というスタンスで、
「もうすぐホリデーシーズンに入るから新年あけてしばらくしたらレジュメを見るよ」とか、
「年末は何かと忙しいし、お金が出ていきやすい時期だからこの時期に採用はしないかな」など受付の人に言われてガッカリしたものです。
うちら同期が7月からプログラムを開始して就職活動を始めるのは4,5か月後なわけでして、12月という求人がほとんどない時期に就職活動をすることになるという宿命でした。(もし、Winipeg Industrial Skills Training Centerに申し込むときは7月入学は避けましょう)
たいてい12月と1月はジョブフェアーなどの就活イベントも全く開催されなくなります。3月、4月あたりから採用の動きが始まるそうで、職業訓練センターの先生たちも
「とにかく、この時期はどこでもよいから入れる会社があったら入ったほうが良い」
「ピッキーなこと(好き嫌いやこだわり)を言っていないでとにかく全部アプローチしてどこかに食らいつきなさい」
と、忠告してくれます。
好き嫌いしない!といわれても、私は車関連の仕事は避けていましたし、妻の職場に近いところか家に近いところを優先的にまわるようにしていました。
12月4日も6軒近くまわったところで車を路肩にとめて、次の会社に行くためにカーナビへ住所を入れていました。すると車窓から自分がまわる予定のリストにない『マニュファクチャリングって看板に書いてある会社』が見えたため、飛び込み営業のごとくレジュメを持っていくことに決めたのです。
不思議となんか気になる会社だったのです。
求人しているかもわからない、何を製造しているかもわからない会社なのになぜ私はこの会社の受付の前に立っているのだろうw。
受付には誰もおらず、しばらくしてご高齢のスタッフが対応してくれました。
「これはレジュメ?ちょっと待ってて渡してくるから」といなくなってしまうではありませんか……。
しばらく待っていると受付担当の若い男性が来て「何か御用ですか?」と優しく聞いてきてくれました。
「さきほど、ご高齢の男性にレジュメを渡したら待っているように言われて待っているのです」
「そうですか、職を探しているのですね。頑張ってくださいよ」
しばらく話をしながら待っていると、なんとその会社の社長(以下マネージャー)が私の履歴を持って私の前に現れました。
「それじゃ、こっちに来てインタビューしましょうか?」と言ってくれたのです。
こんなことってありますw?
たまたまマネージャーが時間があってインスタント・インタビューが始まるなんて……。
緊張する暇もなく「Tell me about yourself」と聞かれます。練習の成果もあってよどみなく話せました。
「なぜ日本からこっちに来たの?東京出身なんだね。東京は行ってみたいな~」
「うちの仕事は金型からパーツを作るのが主で、単純作業が多いし、溶接の仕事がないから君には退屈かもよ」
「働けるとしたらいつから働ける?」
上記のような質問があって(あれ?ここで勤められたら最高じゃないかな?単純作業は好きだしマネージャーも受付の人もいい人だし……)と考えるようになったのです。
いつからでも働けることをアピールして、10分程度の面接は終わりました。
この時対応してくださったマネージャーの名前を聞いておくか、名刺をもらっておけばよかったと後悔しますが、その会社に次の日には面接してくれたお礼メールをして、また次の面接のお願いをしておきました。
あまりに手応えといいますか、感じがよかったため「こりゃイケるかも」と思っていたにもかわからず、残念なことに1週間経っても何も連絡が来ません。
職業訓練センターの同期や先生方も私が初めてのインタビューを受けられたことを喜んでくれていたのに……悔しい。
しょうがないので、心を入れ替えてまた12月11日水曜日にほかの会社を回ることにしました。
もうクリスマスホリデーが近づいてきているため求人などどこもやっておらず完全にあきらめムードに。
EI(失業保険)の支給も12月までとなっていますのでもう来月から私は完全無収入となってしまい焦りと不安に押しつぶされそうになります。
ちょうどそのころ前職で勤めていてレイオフされたカナダグースから「ポジションが空いたから戻ってこない?」と連絡があったのです。
なんというタイミング。
人生の分かれ道ってな感じですw。
妻は「また一緒に働ける!」と大喜びですから、私もそれでもいいかな~と思いながらも約半年間、職業訓練センターで勉強してきたことをどう自分の心で処理したらよいのか悩みます。
妻はダウンタウン工場に勤めて、私は他の場所にある工場(家からバスでは行きづらくちょっと遠い)でのオファーをもらっていたから離れた職場になってしまい、会社は一緒でも職場的に一緒に働けないため、これまたどうしようかと悩みます。
ふと、あの面接までしてくれた会社は私の家から車で約8分と近く、夏は自転車で行ける距離だったことを思い出しました。
思い出していたからか、ただ単にクリスマスホリデー直前だったからなのか、その会社から突然返信メールが届きました。
「もう一度インタビューがしたいので来てくれますか?」と実に2週間ぶりの嬉しい連絡。
もう興奮してきて、即、その日の16時に行くことにしましたよ。
作戦として、ファブリケーションのクラスで図面を見て一枚のアルミ板から自分で作ったツールボックスを持っていくことにしました。
中には自分が製造で教わってきた成果物や、写真付きで紙にまとめたポートフォリオを用意し、さらに、もし工場内を案内してくれる可能性を考えて保護ゴーグルとイヤープラグ(耳栓)も入れておきます。
16時ちょっと前に受付に着き、マネージャーはツールボックスを持っている私に一瞬怪訝な顔をしましたが、そこからツールボックスの説明をし、プレゼンのごとく今までの経験や実績を話し、いかに私がこの職場に貢献できるかを力説しました。
・単純作業が好きなこと。
・溶接よりファブリケーションのほうが好きなこと。
・家がここから車で8分なこと。
・子どもたちが13歳を超えて送り迎えの必要がないこと。
など、前回の面接の時と繰り返しになるけど、しつこくならない範囲で伝えることができました。
マネージャーからは「フォークリフトは使えますか?」とか「トラックは運転できますか?」などの質問がありましたが、トレーニングを受ければ大丈夫ですと答えました。
その後予想通り、工場を案内してくれて、あらかじめ持って行った保護グラスと耳栓が役立ちましたよ。
通り沿いの外観からは小さい工場に見えたのですが、中は意外に広くて大きなプレス機械がたくさんありました。
なんだかこの工場内は既視感があってワクワクしてきます。(ここは初めから縁を感じた)
「仕事してもらうとしたら、まず始めはこの作業からはじめてもらうからね」と説明してもらった時に、心の中で
「え!ってことはもうほぼ採用決定ってこと?!(うれぴ~)」と叫びそうになりましたよw。
実際には、給料についてや保険などの福利厚生について、そして試用期間などを決めなければならないため正式オファーはまだお預け。
「遅かれ早かれ正式に雇用についての回答をします」と言われて2回目の面接を終えたのが12月18日。
カナダグースからの復帰オファーへの回答期限が12月20日(金)。
職業訓練センターの今年の最終日も12月20日の午前まで。(新年のスタートは1月6日から)
もうこの時は本当に不安と期待でドキドキして高血圧や不整脈になりそうになりw、いかに今年が激動だったかの象徴のような期間でした。
そして、ついにその日はやってきます。
12月20日の夕方、例の製造会社から正式なジョブオファーのメールが届いたのです!(感涙)
妻も子どもたちも喜んでくれました。
「おめでとう!あなた。ちょっと早めに最高のクリスマスプレゼントが届いたわね」
カナダグースにはオファーを断り、カナダグースで一緒に働けなくなったことを妻は一瞬残念がっていましたが、縁を感じた会社に勤めることができたことを心から喜んでくれたのです。いろいろと今回の就活でサポートしてくれた妻と子ども達には感謝しかありません。日本の実家・義実家、そしていつも応援してくれる読者さんにも感謝です。
職業訓練センターの先生たちにもメールを送りましたが「クリスマスホリデーに入ったため1月6日以降に返信します」と自動返信メールが届きました。
新しく働き始める会社は1月2日からスタートするため、もう職業訓練センターには直接お礼や挨拶に行けないことになりました。寂しいことです。仲の良い同期には就職が決まったことを報告して、お互い違う新しい職場で頑張っていくことを誓いましたよ。
とりあえずこれで安心して年末を過ごすことができます。(安心といっても新しい門出への不安もありますけどね)
お祝いで食べ過ぎて体重が増加傾向にありますから、引き続き冬休みはホームジムで身体を鍛えていこうと思っています。
あなたにとっても素敵な2025年を迎えられますように……。
それでは、また。