過去の私の話その4【エンディングビジネスがエンディングへ】

ビジネスプランコンテストで優勝したのを機に、私はビジネス系の大学院に特待生として入学することができました。

各分野のプロフェッショナルや、個性あふれる人材が集まり、起業初期の事業を皆で盛り上げていくというゼミがありまして、上場間近の社長さんやカリスマ経営者と一緒に時間を過ごす経験をしました。

ギラギラしたガンガンイケイケのメンバーに圧倒されましたが、私のエンディングビジネスについてプレゼンするとき、以下のように皆さんに質問してみました。

「死ぬ前に「迷惑をかけたくない」と思って居心地がさらに悪くなってしまう人が、どうしたら居心地よく、やすらかな最期を迎えられるでしょうか?」

今まで、ゲップが出るくらい薬や健康サプリメントを飲んで『元気にイキイキ、長生きに!』と頑張ってきた、いや、頑張らざるを得なかった人たちにサービスを提供するのではなく、「安らかに、居心地よく(罪悪感なく)自分らしい終末期を送って最期を迎えたい」と思う人にどのようにサービスを提供できるかを一緒に考えて欲しかったのでした。

ゼミのメンバーは賛否両論(実際は否ばかりでしたが)で、
「君のビジネスはもうからないね、金と時間がかかりすぎる」
「終末期の文化を変えるだって?文化を変えるといって上手くいったやつはみたことがないよ」
「本人がお金を払うのか、身内がお金を払うのか、もっと絞ったほうがいい」
「生前葬ではなくて、喜寿や米寿、金婚式などのお祝いにしたら?」
「誰がこの事業をしているかで信頼を得られると思うから、もっと終末期の権威をトップにしてはどう?」
など、様々なご意見をいただくことができました。ありがたいものです。

商品を売るわけではなく、まだ誰も扱ったことがないサービス分野なだけに「これぞ!」という道がみつかりません。

良いと思ったことはすべてやってきましたが、問い合わせが来るのは「うちに広告を出しませんか?」とか「同じようなビジネスをしたいのですがお話を聞かせてください」など、売り上げに直結する連絡はありません。

ある時は某有名テレビ番組の制作会社から「御社の活動について取材させてください。(中略)ところで、今の年商はいくらでしょうか?」と聞かれ、赤字の経営状態を話したら、番組的に【画になる映像がない・実績がない】と意味がないとのことで取材はなしとなったこともありました。

この『実績がない』という問題と、『お客様にどうやってアプローチしたらよいのか』というマーケティングの問題が結局鳴かず飛ばずの状態を作ったのだと思います。

「権威がなければ、信頼がなければ、実績がなければ・・・」と自分を追い込んでしまい、また失敗した時の怖さで、アプローチができなくなっていったのです。

そもそも、どうやってアプローチしていったらよいのでしょうか?

あなたは、【コンプレックス・ビジネス】という言葉を聞いたことがありますか?

コンプレックス(例えば:ダイエット、カツラ、皮膚疾患、痔、包茎等)を扱うビジネスは、消費者に直接営業しづらいものです。

私はすでに禿げて、スキンヘッドにしています。もう私くらいの年齢や状態になるとカツラや増毛を考えることはありません。なぜなら、禿げを受け入れて、自分のスタイルとしているからです。(抜け始めの時が一番悩みました)

アートネーチャーやアデランスはテレビでよくCMをしていました。大衆に対して大きく網をかける方法(頭皮チェックや無料増毛などの特典CM)で、見込み客を増やしていくわけですが、これは相当な資金力と売上までのステップが必要となります。

そういえば、カツラメーカーの店舗は、建物の1階にオープンさせないのですってね?

店舗を2階以上のどこかにして、薄毛を悩んでいる人がどの階の店舗に入ったかわからないようにする心遣いがあるそうなのです。つまり、それだけコンプレックスビジネスというのはデリケートなのです。

そんな薄毛で悩んでいる人へ「どうですか?増毛しませんか?」と直接営業をしようものなら、傷つくか「余計なお世話だ!」という反応があることでしょう。

同様に、終末期のかたへ「死ぬ前にしたいことしませんか?」と、直接聞きに行くことができません。

ましてや、話していて仲良くなるとなおさらその人の死について話し合うことが難しくなっていくのでした。

このパラドックス、もどかしさ、そして、焦り。もう、何度も経営をやめようかと思ったのですが、実家の古書籍業を手伝わせてもらって何とか食べていくことができ、お坊さんや葬儀社さん、そして起業家などの仲間に助けられながらライフワークとして続けることにしたのでした。

そして、転機が訪れます。

TBS系列のドラマ番組『最高の人生の終わり方-エンディングプランナー』が2012年に始まりました。

私の商標登録していたエンディングプランナーが葬儀スタッフのドラマとして使われたのは驚いたのですが、もっと驚いたのは、商標を使いたいという問い合わせがとある葬儀社さんからあったことです。

私はここが潮時だと思いました。

やがて、自分の会社とエンディングプランナーという商標など権利関連はすべて売ることにしたのです。(合計数百万円になりましたよ)

あんなに天職だと思ったエンディングプランナーで、あれほど理想や理念を掲げていたにもかかわらず、会社を売ったら、私は心底「ホッ」としていました。

もう法人の確定申告をしなくてよく(特に税金に悩まされず)、また、様々な雑務、メールのやり取りから解放されたからか?

いや、やり切った感があり、これからは子ども達中心の世界で生きようと決めて、そちらに進めると思ったからかもしれません。(その後、この記事のように思い直しましたが)

最後に、私の失敗の原因をまとめたいと思います。

私は、起業することで社会に認めてもらえ、貢献ができることで自分がもっと『居心地がよくなる』と思っていました。

同時に、自分が作ったストーリーの主人公(この場合エンディングプランナー)に自分がなれたらどんなに幸せだろうかと思っていました。

でも、マーケティングがうまくいかず、売り上げにつながらなかったため、結局、一番楽しく充実していたと思えたのはビジネスプランを作るところだったのです。もっと詳しく言えば、経営や管理よりただ自分の世界を創造でき、表現する場ができたことで満足してしまったのでした。

言い換えるなら、私が生みの苦しみを感じて作ったエンディングプランナーという独自性の強いストーリーに自分が酔っていただけで終わらせてしまったのです。(自分の過去が癒されると期待してしまったし、自分が考えたものは特別なんだ!と思いたかった)。さらに、「生みの苦しさ」という言葉があらわしているように、自分のビジネスを過保護に扱いすぎ、子離れができない親のような心境になってしまったことも反省されます。

色々な意味づけ、言い訳、理論武装をしてきても、実際のエンディングビジネスではうまくいきませんでしたが、ライフワークとして『罪悪感と居心地の良さの考察』をさらに深めることができ、こればかりはいつも気になってしまうものだと実感しました。

最近、衝撃的な出会いや出来事が重なり、このライフワークを何か形にしていきたいと思えるようになっています。

いずれ、このブログで何かご報告できるようになるかもしれませんが、今現在、何かご意見や感想をお持ちの方はぜひすぐご連絡ください。

これからも引き続き応援してくださると嬉しいです。

それでは、また。

※次回はビジネスプランについての番外編を書いてみたいと思います。

※備忘録(前回の投稿から今回までの支出)
【合計988.98ドル】家のローン含む

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