日本人にはないような鋼のメンタルを持つ他民族の人たちに学ぶこと。

前々からブログで書いていますように、職業トレーニングセンターに通って様々な国の人たちと切磋琢磨しながらカナダ・マニトバ州ウィニペグでモノづくりの基礎を習っています。

先週はトーチカッティングといって高温のガストーチで鉄を裁断する方法を学び、今週はファブリケーション(製造)といって図面をもとに寸法を測りながらカットとベンド(折ること)を繰り返し、アルミニュウム製のツールボックスを作っています。

私は基本的にDIYが好きなので、全く問題なく図面が読めますし、寸法を間違えず、しかも工具も使えるほうだと思います。

そのため、他の人より早く作ることができているようで、多くのクラスメートが私にやりかたを聞いてきます。

「この2.563インチってデシマル(小数)をフラクション(分数)に直すといくつになるの?」

(それ、先月までの座学で散々勉強したじゃん!)と心のなかでツッコミながらも

「2インチと16分の9だから、16のincrementのメジャーで測っていったほうが良いと思うよ」と優しく答えます。

「え?どういう意味? ちょっとこのメジャーを使って教えてよ」

と結局、寸法を教えながら作業を手伝うことになるのです。

手伝うことが当たり前になっていき、

「おい、こっちはどうするの?」

「この角度は45度に曲げるの?135度だっけ?」

「ここ、切り過ぎちゃったんだけどどうしたらよいかな?」

(知らんがな!)と思うことまで聞かれるのですが、答えられる範囲で答え、あとは「あとで先生に聞いたほうが良いよ」と答えています。ちなみに、先生は他の現場も忙しく回っているため、私たちの作業は少し見て回ってすぐにいなくなってしまうのです。(しかも先生は怖い人なので聞きづらい)

先生に怒られたくないから私に聞いてくる人や、先生に聞きにいくのが面倒くさいからすぐ近くにいる私に聞くということがあり、彼らの子どもっぽい純粋さといいますか、たまにズル賢さも見え隠れしてどう割り切っていいかわからなくなることがあります。

特に【日本人にはないような思考やメンタル】に相変わらず驚かされます。

もちろん日本人でも自分勝手過ぎる人や楽観的過ぎる人、怠慢すぎる人はいるものですが、文化の違いがバックボーンにあるそれらの傾向は「これらの海外らしさは日本だったらドン引きだろうな~」というカルチャーショックにも似た違和感を覚えさせるのです。

例えば、よく言われる「ビジネス上の会議での議論で感情的になったとしても、会議が終わった途端、いつものフレンドリーさに戻っているという現象」。つまり、ビジネス上での意見の相違を対人関係のもつれまでに発展させず、後腐れない議論ができるのって海外らしいですよね。

以上のような良い面での海外らしさだったらまだいいのですが、度が過ぎる図々しさや楽観主義的な『鋼のメンタル』を振りかざされる時があります。その場合、愛想笑いをしてしまうか、逃げるかを考えてしまいがちな日本人は少なくないと思うのです。

私もクラスメート達に先述のように製作について質問されて、良かれと思って愛想笑いをしながら手伝っていました。

しかし、段々要求がエスカレートしてくるんですよね。自分の作業もあるのに、すべてに答えることはできません。

 

現場での具体的な話の例として、私とほぼ同い年のクラスメートのダニエル(←仮称)とのやりとりについて書いてみたいと思います。

「おい!こっからどうするの?」と自分で設計図も見ないで私とは違う自分の次の行動を聞いてくるのです。

「どうって、どこまでやっているんだよ?ここは1.125インチを1と8分の1にして測って、マーカーで印をつけるところから始めなよ」

「で?つぎは?」

こんな調子で、依存してきます。(私はあなたのベビーシッターではない!)

彼は計算やDIYのレベルが自分でも認めているほど低いですが、プライドだけはインチやフィートではなく、ヤードで測れるくらい高いのです。

あまりに自分で制作できないため、私のとなりに移動してきて作業するようになったのでした。

基本的には人懐っこくて憎めないキャラなのですが、とにかくやることが雑だし、面倒くさがり屋なのです。次になにをやる、これをしたら何が起こるかという想像力が乏しく、たとえ悪いほうにいったとしても楽観的で人任せ。言い訳だけは一丁前な子どものような大人……。

このように書くと中傷や愚痴かな?と勘違いされるかもしれませんが、カナダ、もしくは海外に住んでいる人がこの上記の人物像を読んだ際「うん、うん。こっちでもいる!」と激しく同意してくださることと思いますw。

私の8年間のカナダ生活で何度もこのような人物に会っています。

カナダに住んで長くなったからなのか、私が年取ってきたからなのかわかりませんが、おかげさまで私も図々しくなり、言いたいことをだいぶ言えるようになってきました。

ダニエルの話に戻りますが、彼は自分で教わりに来ているのに、偉そうにものを頼み、教えても言い訳ばかりして行動せず(じゃあ勝手にしろ)とおもってしまうほど態度が悪いのです。

「おい、ダブルチェックしろ(ダニエルが測った寸法が本当に合っているか私に確認させるっていう命令調)」

「おい!じゃないだろ!Kazuという名前をまだ覚えてないのか?」(職場では和広のKazuで呼んでもらっています)

このようなやりとりは一度だけではありません。

あまりに横柄な態度が続いたため私は語気を強めて、

「お前はarrogant(傲慢)だな。いつから俺のボスになったんだよ」とチクリ。

相手が言いたいことを言ってくるのですから、こっちも言いたいことを言わせてもらいます。

「ダニエル!ここはカナダなんだから、もっと相手を尊重するようにPleaseやThank youを使おう!」

自分が怒っていることだけを強調するのではなく、具体的に何が足りなくてどうしたらよいのかも伝えないと本当に伝わりません。そのため、彼が私に質問をする際にはPlease(どうか〇〇してください)とThank youなどの感謝を伝えるようにというお願いをしました。

「これを言ったら嫌われちゃうんじゃないかな?」「気まずくなったら嫌だな」なんてあまり考えなくなってきたのかも。

言わないと伝わらないし、伝わらなければその時に次のことを考えればいいのであって、最初から自分を押し殺したり、相手の出方を忖度しすぎる必要はないのだと思うことにしたのです。いや、そう思わないと海外で上手く生活していけないような気がしていますw。

制作を教えてもらえなくなって困るのは彼だし、私は別に友達を作るためにトレーニングセンターに通っているわけではありません。だから強気で言えるという面があります。

それに、言わないでモヤモヤし後悔するより、ぶつかって言って後悔したほうが自分に合っているという側面もあるため極力伝える努力をしています。(もちろん無視したり、逃げたほうがよい場合もありますが……)

 

さて、私がズバリと伝えた時の彼の反応はどうだったでしょうか?

もし相手が日本人だった場合は、ショックを受けたり、申し訳なさを出したり、はたまた逆上するかもしれません。

しかし、ダニエルは

「Kazu。僕は君に聞くとき、何千回とPleaseとThank youを言っているよ……頭の中で。でも僕はバカだから頭から抜けてっちゃうんだよ」

とニッコリと人懐っこい笑顔で言ってくるのでした。

それからすぐ懇願するような顔になって

「君のおかげだってことはみんなもわかっているじゃないか……」

などとモラハラ男が相手を懐柔するときのような憎めないキャラを前面に出してきます。

その場では許しちゃうから、ある意味、調子のいい彼の術中にはまってしまっているのかもしれません。

その後は「今、聞いてもいい?」とか「Please tell me」など使ってくれるようになりましたが、来週になったらまた戻っているかもしれないし、戻っていたらまた言えば良いことだからあまり考えないようにしますw。

彼らのメンタルって尊敬できる部分が多いものです。

一生懸命にやらなくても、自分が上手くいかなくても平気でいられるし、自己肯定感が強いから最強のようにみえるのです。

最近になって私もようやく【ついつい頑張ってしまい、色んなことに忖度して勝手に感情を乱す自信のない自分】を彼らのおかげで脱却できてきたので、作業トレーニングとともに、これからももっと自分なりの生きやすさを鍛えていければと思っています。

明日から9月。

あなたにとっても素敵な月になりますように。

それでは、また。

 

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