海外移住って基本的にビザの問題が前提になるよね。
最近、カナダ・マニトバ州のウィニペグに移住したいという人からご相談をいただくことが続きました。ありがたいことです。
どのような内容の質問がくるのか興味がありませんか?
え?
ないって?(そんな~w)
でも、今回はクセの強い質問者さんからメールがありましたので、実際のメール内容をデフォルメしたうえで、私がどのように対応したのかも含めて【海外移住とはどのようなものなのか】ということが伝わればと思っています。(おそらく海外移住者で情報を発信している人なら同じような質問を受けているかもしれません)
質問者さんからの1通目メール
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初めまして林です。(仮名)
日本で歯科助手の仕事を5年ぐらいやっていて、歯科衛生士の資格も持っているのですが、できればマニトバ州のデンタルクリニックで仕事がしたいと考えています。歯科助手の仕事が難しい場合は、ほかの仕事でも構いません。
お金もあまりなく、家族で一緒に移住したいのですが、何かチャンスはありますか?40歳代です。
車の免許は持っています。英語での日常生活や日常会話は問題ないと考えています。よろしくお願いします。
****ここまで****
ほぼほぼこんな感じの内容です。
このメールを読んで私はツッコミどころが多いな~と感じたと同時に、違和感を得たのでした。
最初から最後まで自分のスペックや希望しか書いておらず、私との関係について何も書いていません(←ボルさんの素敵なブログを読んでますとか書いてくれればいいのにねw)
「ほかの仕事でも構いません」ってところに「私に仕事を探せ」ってことかと思ってしまいました。
しかも「何かチャンスはありますか?」ってどんなチャンスを期待しているんだろう?(←この依存心も気になる)
つまり、自分の都合よく私を使おうとしているように感じてしまったのでした。
このような不躾メールに私は以下のように優しく返信しています。
私からの返信メール1通目
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同年代の方からウィニペグ移住に興味があるとの連絡は嬉しいです。
林さんの年齢では学生ビザか就労ビザが必要となってくるかと思いますが、残念ながら移住のビザに関する相談は、カナダ公認の移民コンサルタントさんしか受けることができません。(法律で決まっているからです)
ですので、私が林さんのビザをお世話(仕事あっせんも含む)をすることができない立場なため、ウィニペグ入りが決まった時に移住の実務サポート(送迎や引っ越し手伝いなど)しかお役に立てないと思っています。
申し訳ございません。
一度、たとえ有料になったとしても移民コンサルタントさんに相談してみることをお勧めします。
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質問者さんからのメール2通目
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信頼できる移民コンサルトさんはいますか?
また、日本のマイナビみたいにカウンセラーみたいな人がついてくれて、要望を聞いて、仕事や応募を一緒に助けてくれるような人はいますか?
日本のマイナビは無料ですが、マニトバ州やウニペグでは、たぶん有料ですよね。もしも、カウンセラーみたいな人がついてくれて、マニトバ州の仕事を探すことができて、応募もできれば後のビザ手続きなどは、自分でできるかもしれないです。
なにか、いい情報があれば教えてください。よろしくお願いします。
****ここまで****
2通目のメールを読んだ時に「なるほど、私をマイナビのように思っていたんだ」と納得しました。無料で助けてくれて、いい情報をくれる都合の良い人だと思われていたようです。なんだかモヤモヤしてきます。
そういえば、このように「紹介してくれ」「現地について教えてくれ」「いい情報をくれ」「会ってくれ」「友達になってくれ」などの要望しかメールしてこない人って【くれくれさん】って呼ばれていたような……。
なんだか私の中でスイッチが入ってしまって、長文で返信をしていました。(無視してもよかったのにと後悔)
私からのメール2通目
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前回と今回のメールで私と林さんと、カナダ移民に関する感覚がだいぶ違うように感じました。
もしかしたら林さんが期待するような「何かチャンス」や「いい情報」があるのかもしれませんが残念ながら私は知りません。
以前、林さんとほぼ同い年の人も「出たとこ勝負でカナダに行っちゃえば大丈夫」と希望的観測のもとウィニペグにきて、結局、永住権をとれずに帰ってしまいました。その人も「ほかの人が知らない情報があるはずだ、裏道を突き止めてやる」と言っていましたがそんな情報も裏道も見つけれることはできなかったようです。(あるのかどうかも疑問です)
私はその人から色々と質問されて経験則に基づくアドバイスをしたのですが、それは相手にとって都合の悪い現実だったらしく私に返信や礼の一つもなくフェイドアウトしてしまいました。
おそらく今回、私が林さんに送るこの文面も面白くないことでしょう。でも、私はいつでも真剣に向き合い、2時間近くかけてこのような文面を作っています。
さて、実際に林さんのメールの中の何が私に違和感を覚えさせたかといいますと、
『今現在日本にいる林さんは、カナダですぐ雇用されることを前提に仕事探しの話をしている』というところです。
それでは、まずお聞きしますが
「職を募集しているカナダの会社の雇用主は、なぜ日本に住んでいる林さんを雇わなければならないのでしょうか?」
これは林さんの能力とか、人格を疑っているわけではなく『カナダの企業はカナダ人や永住権保持者を率先的に雇用する』という常識があるからです。
例えば、日本語堪能なフィリピン人が日本の会社にフィリピンからレジュメを出して、日本の企業が雇うかどうかというのと似ています。よっぽどの専門知識や特殊技能がない限り、日本の企業は、日本人を雇うことでしょう。カナダも同じように自国に住む人の雇用を優先するようLMIAという規則があります。(カナダ LMIAで検索してみてください)
それでは、カナダにある日本料理店にワーホリ以外の人が応募するのはどうでしょうか?
いや、これもよっぽど料理人として技量や経験がないかぎり、永住権を持っている日本人や韓国人、中国人が優先的に現地雇用されていきます。
歯科助手も同じく、5年以上のベテランはカナダ人や永住権保持者にもいまして、カナダにいられるステータス(永住権や就労ビザ)をすでに持っている人から募集が埋まっていくのです。
つまり、
「へ~Hayashiって人が日本からアプライしてきたって?で、その人、こっち(カナダ)で働けるの? ん?何? 就労ビザを持っていない? しかも自分で就労ビザを手続きするって?もしかしたらカナダ移民局から就労ビザが受理されないかもしれないし、いつ受理されるかもわからないのに、どうしてこの競争の激しいポジションに選ばれると思っているんだろう? 会社が高い金を払って就労ビザを彼に出すくらいなら、やっぱりカナダ人や永住権保持者を雇ったほうが即戦力になるし面倒にならないな」
というのが、私の知るカナダの職探しの現状の感覚なわけでして、林さんとだいぶ温度差があると感じたわけなのです。
どこの国に移民するにしても滞在するための許可証(ビザ)が必要になります。ビザがいらない自国で働けるのはありがたいことです。
日本だからマイナビのようなサービスがあり、日本人だからマイナビのサービスを享受できるのです。
もし、林さんが医者やIT関係、科学者、エンジニアなどの専門職(歯科衛生士は含まれないかと)の職歴が長く、カナダに多くの税金を納める見込みがある人ならそれなりの移民プログラムがあります。(これら可能性のあるビザについて移民コンサルタントにお問い合わせください。私の知っている移民コンサルタントさんはもう辞めてしまったのでおすすめできるところはありません)
「カナダに行って、何とか職につければいいんでしょ?」という人はたいてい失敗しています。繰り返しとなりますが(ワーホリだったらありえますが)就労ビザを持っていない人をカナダ企業は雇わないですからね。
ですから、おいしい話や、何かチャンスな話、良い情報なんて期待されても、国のシステム(法律)がしっかりしているわけですから、どうにもできないんですよ。
ここまでお読みいただき、もし不愉快に思われたら申し訳ございません。
でも、一度応募してみると現実がわかると思います。
こっちに住んでいる人でさえ応募してみても返事がないのがほとんどですし、100通応募してようやく2,3通返信があったという感じですから。
ましてや、日本からの応募で、まだビザが取れるかわからない人、誰にも負けないくらい特殊技能や専門知識があるわけでもない人に対して「カナダにきて我が社で働いてください」なんて応募にこたえてくれることにはなりませんって……。
どうして、まだスタートラインにも立っていないような人を就活カウンセラーが助けられるのでしょうか?
逆に、もし何かチャンスな話や良い情報を他から得られましたら是非教えてください。すごく興味があります。
(移民コンサルタントさんに相談してその応えもぜひ教えてくださいね)
みんなこの最初の一歩(就労ビザをもらうには)で苦労しているのです。
ですから、林さんもこの山に挑戦してみるご予定でしたら、ぜひプロ(移民コンサルタント)に頼んでみてくださいね。
私も応援しています。
それでは、また。
ボル
****ここまで****
結構厳しく書いています。
相手からの返信が来なくなりました。(追記:こちらからメールしたら返信がきました)
※このようなくれくれさん達に対して、「良い情報やチャンスが聞けたのか」「その後どうするつもりか」などの質問をして、こっちが【フィードバックをくれくれさん】になってみることにしましたよ。
その後のことはまだわかりませんが、良い情報などの知識やこれからの方向性などのフィードバックがいただけるまで頑張ってみようと思います。(だって相手が心配ですし、私が間違ったことをいっていたり、新しい情報があったりしたら自分をアップデートしておきたいですしね)
わかっていただけるかと思いますが「もっと苦労しろ」と言っているわけではないのです。
あまりにも移住と就労ビザとの関係といいますか、他国で働くという意味を知らなすぎなのでは?と感じてしまうのです。
「英語がしゃべれるんだから他国でもすぐ働けるでしょ?」
「日本に住んでいながら海外に向けて就職活動していれば、いずれどこか就労ビザを出してくれる会社が見つかるんじゃないの?」
などと安易に考えている人、少なくないように思います。(←このモヤモヤさせる事例に共感してくれる海外移住者(=よく日本人から相談される人)も少なくないと思いますw)
逆に、英語がそれほど話せなくても就労ビザや学生ビザなどビザを得てしまえば移住できてしまうのですよね。
海外移住とは『他国語が話せる話せないの問題ではなく、基本的にはビザの問題である』ということをもっと知ってほしいと思います。
働くということ=他国に貢献し、納税をすることが海外移住者と旅行者を大きく分けるところでして、例えばカナダの永住権の申請にあたって「カナダにとって役に立つ人材」であることを示す必要があります。
2023年8月15日の朝日新聞の経済・総合面で「わたしが日本を出た理由 カナダ編」が5回にわたって連載されていて、上記の「カナダにとって役に立つ人材」という言葉が記事の中にありました。同時にカナダの移民政策や多様化文化の特色なども書いてありました。(私のいとこのおじさんが記事を切り抜いてくれていて、それを郵送してくれた実家にも感謝)
連載記事を概要してみますが、
「人口の4分の1が移民とされるカナダは、2025年には受け入れを年間50万人に増やす計画を掲げている。多様性は力の源、移民を国の競争力を向上させる手段ととらえて積極的に受け入れている一方、家賃相場の高騰、移民者が希望の職に就きづらい問題などがあり、永住権取得までの道は簡単ではない」
といったようなことが事例を交えて書かれていました。
このような記事の影響もあってか、マニトバ州に住む私のところにも相談が増えたのかもしれません。
マニトバ州では、明日2023年10月1日から最低賃金が14ドル15セントから15ドル30セントに上がります。(円安の現在約1,682円の時給になる)
マニトバの労働連盟のレベック会長が「この最低賃金でも、労働者が基本的ニーズを満たすために稼ぐ必要がある生活賃金に依然として3ドル及ばない」と述べているように(インフレ率は下がっていますが)物価高騰はいまだにひどく生活費が足りない家庭が多いです。しかしながら、毎年最低賃金が上がっていくカナダには感謝をしています。
物価高、家賃高騰が著しいバンクーバーやトロントといった大都会から、永住権獲得のためにマニトバ州ウィニペグに移り住む計画の人からもちょくちょく相談がきます。
「マニトバでの職探しのコツなどありましたら教えてください」
などと聞かれて以下のように回答することがあります。
****ここから****
1,OFEというところやマニトバスタートという就職支援団体に登録する。
2,IndeedやほかのSNS(例えばFacebookのマーケットプレイスなど)から仕事を探す。
3,ウィニペグにきてから自分で自分を売り込むために訪問をつづける。
4,知人や友達に紹介してもらう。
5,ジョブフェアーというイベントがたまにあるので検索して調べておく。
といったことが挙げられます。
残念ながら、今現在私が紹介できるような職はありません。
最近では就職支援団体でトラック運転手になるためのプログラムを受けることで物流会社のジョブオファーをもらうというのがちょっとした良い道とされています。なぜなら運送業は人手不足ですからね。給料もよいですよ。
自分は何が得意で何がしたいという視点で職探しをするよりも、永住権を取りやすいという視点で職探しをするというのがマニトバ州での職探しのコツなのかもしれません。
うまくいくことを祈っています。
ウィニペグで何か実務的なお手伝い(送迎や引越し手伝いなど)が必要な時はご連絡くださいね。
ボル
****ここまで****
ジョブフェアーは上の写真のように会場でブースが出ていて面接ができるといったものです。
Indeed(インディード)というサイトには玉石混交な企業が求人募集をかけています。ウィニペグに来る前に一度、目を通しておくとよいかと思います。
毎年人口が増えている各カナダの都市では、求人の競争率が高くなっている傾向にあります。
そのため、早いうちにカレッジ(職業訓練学校)に通って、永住権申請につなげ、取得後、本当に自分がやりたいことに挑戦するといった流れが多く見受けられます。(自分のやりたいことを優先してしまうと心が折れやすくなるかも)
その2,3年の過程を乗り越えられなくてあきらめてしまう人も多いです。
「カレッジにいかず、すぐ働いて永住権をとるにはどうしたらよいでしょうか?」
これもよく聞かれる質問ですが、何度も書きますがよっぽどの特殊技術や専門知識がないと難しいです。
ただし、最近X(元ツイッター)のアカウント@Maple【カナダ起業×移住サポート】さんで知ったICT-WP(企業内転勤就労許可証)については40歳以上の方なら興味が出る内容だと思いますので、もうちょっと調べたほうが良いかもしれません。(←私が勝手に紹介しているだけで私に紹介料などは発生しません)
最後になりますが、もし、マニトバ州に移住予定の方は、毎年のように更新される移民法に無知な素人(私を含む)にビザ関係のことを聞かないほうが良いです。(騙される可能性もありますし、その情報が古くて使えなくなっていることもあります)
やがてもしマニトバ州に移住できるビザを確保することができましたら、ぜひ私にご連絡ください。有料になってしまいますが送迎や一時的な宿泊部屋の提供、買い物付き添いなど便利屋的なお手伝いができることでしょう。
今回のブログでは実例をとりあげ、海外移住、マニトバ移住に関する貴重な情報を散りばめたつもりです。
もし、何か一つでもお役に立てることがあれば幸いです。
それでは、また。